なぜ９０年車が２００８年まで関東バスで活躍していたのですか？

拙ブログでは少し前に自動車ＮＯｘ・ＰＭ法について取り上げました。簡単に説明すると、
同法に適合していない車両は対策地域内で継続して車検を取得することが出来ないとい
うものです。しかし東京の関東バスでは、近隣他社が９６年登録の車両を廃車するなか、
現在も３扉のＵ規制車が活躍しています。２００８年頃まで１９９０年※に登録された車両も
活躍していました。
※型式・年式は「おじゃましますバス会社潜入レポート関東バス所有車両全データ」
『バスマガジン１８号』（２００６）、三推社/講談社を参照しております。












社番：Ｂ５１０９．Ｕ－ＵＡ４４０ＬＳＮ（９０年車）。
７Ｅボディでも出入口表示部が行灯タイプが初期車の目印。

関東バスの営業所はもちろん自動車ＮＯｘ・ＰＭ法の対策地域にありますので、１９９０年車
が２００８年まで車検を継続することは基本的に出来ません。では、なぜこういった事例が
見られた（見られる）のでしょうか？今回はこのあたりについてまとめてみたいと思います。

関東バスの３扉車をよく見てみましょう。































Ｂ３００４．Ｕ－ＵＡ４４０ＨＳＮ（９５年車）。
リヤのガラスに青いステッカーが貼られていることに気付きましたでしょうか？











ステッカーを拡大したものがこちら（Ｂ３００４とは別の車両です）。
これは「自動車ＮＯｘ・ＰＭ法適合車ステッカー」といい、排出ガス規制に適合していることを
あらわすものになります。このステッカーは自動車ＮＯｘ・ＰＭ法適合車を見分けることを目
的とし、該当車両には２００８年頃からこのステッカーを後面ガラスに貼付することとなりまし
た。つまり、現在も活躍している関東バスの３扉車は自動車ＮＯｘ・ＰＭ法適合車なので車検
を継続して取得することが出来るのです。とはいえ、他社では自動車ＮＯｘ・ＰＭ法の影響で
ＫＣ規制車が廃車になるなか、どうして関東バスのＵ規制車は適合車なのでしょうか。

ここで出てくるのが、延命装置とも言われる「ＮＯｘ・ＰＭ低減装置」です。
国土交通省で認証を受けた装置もあり、取り付けた後、陸運支局で記載変更を行うだけで
ＮＯｘ・ＰＭ法適合車になるというものもあります。ただし、認証を受けた装置はエンジン型式・
ターボ有無で取り付けが可能となる車両が限られています。バスでは一部の中型車と、いわ
ゆる「観光バス」と呼ばれる型式に対応した大型車が対応している状況です。
認証装置の無いエンジンの車両を適合車に変更するには低減装置を取り付けたうえで、公
的検査機関に持ち込み測定試験を受ける必要があります（大型車の検査はつくばにある財
団法人日本自動車研究所が有名。全国各地から検査を受けるためにバスやトラックが集ま
るとも言われています）。ここで合格すればＮＯｘ・ＰＭ法適合車となります。おそらく関東バ
スの３扉車はこのような手順で適合車になったものと推測されます。

書いてみると実に簡単なものですが、この試験は高額な試験料に加え、１日に試験を行う台
数が非常に少ないというものです。それに加えて高額な低減装置を取り付ける必要があるこ
とから、路線車に延命措置を行っている事業者はほとんど無いのが実情です。関東バスが
組合の方針なのでしょうか？なぜそこまでして３扉車を残しているのか分かりませんが、非
常に手間とコストをかけているということはお分かりいただけたかと思います。

そういったことを頭に入れながら、「型式写真」などを撮るのも宜しいのではないでしょうか。





















Ｂ３０１６．Ｕ－ＵＡ４４０ＨＳＮ（９５年車）。
ＮＯｘ・ＰＭ法適合車ですから、もちろん転属も可能。多摩２００ナンバーとなった最後のＵ規
制車では・・・。側面方向幕が地方バス会社の移籍車状態で話題となったＢ３０１６です。